あのとき、少し迷った。
今年は大丈夫だろうか。
去年もかからなかったし、体力もそこそこある。
そんな小さな自信が、どこかにあった。
ニュースでは、今年も流行の兆しと聞いていた。
けれどテレビの向こうの話は、
どこか遠い世界の出来事のようだった。
そして数週間後。
喉の奥が、ひりひりと痛んだ。
熱がじわじわと上がり、
体の節々が、重たくきしむ。
ああ、これはもしかして。
病院の待合室で、
静かに順番を待ちながら思った。
やっぱり、打っておけばよかったな、と。
ワクチンは、魔法ではない。
打ったからといって、絶対にかからないわけではない。
でも、重症化を防ぐ可能性がある。
つらい時間を、少し短くできるかもしれない。
あの数分の注射と引き換えに、
数日間の高熱を避けられたかもしれないと思うと、
その差は小さくなかった。
布団の中で、汗をかきながら、
ただ時間が過ぎるのを待つ夜。
健康でいられる日常が、
どれほど静かで、ありがたいものだったのかを、
やっと思い出す。
来年はどうするだろう。
きっと、あの待合室の空気と、
あの夜の熱を思い出すはずだ。
そして小さくうなずいて、
袖をまくるのだと思う。
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