もしも、世界からお酒が消えたら。
居酒屋の明かりは少し静かになり、
コンビニの棚から缶ビールが消える。
肝臓の病気は減るだろう。
二日酔いの朝も、きっと少なくなる。
交通事故も、いくらかは減るかもしれない。
では、それで「みんな健康」になったと言えるだろうか。
たしかにアルコールは体に負担をかける。
飲まないほうが医学的には安全だ。
それは間違いない。
でも健康は、血液検査の数値だけでは測れない。
一日の終わりに、
誰かと乾杯する時間。
本音が少しだけこぼれる瞬間。
張りつめていた気持ちが、ふっと緩む夜。
そこに救われてきた人もいる。
もちろん、依存や暴飲は別の問題だ。
お酒に飲まれてしまえば、
心も体も壊れてしまう。
けれど、
お酒そのものが消えれば、
孤独やストレスまで消えるわけではない。
人は別の何かで埋めようとするかもしれない。
甘いものかもしれない。
仕事かもしれない。
スマホの画面かもしれない。
健康とは、禁止の数ではなく、
満たされている感覚の総量なのかもしれない。
体を守ることは大切だ。
でも、心の逃げ場を奪うだけでは、
本当の意味での「健康」には届かない。
お酒を飲まなければ健康になる。
それは一部の真実。
けれど、
お酒がなくなっても、
笑顔が増えなければ、
それは本当に健康と言えるのだろうか。
グラスの中身よりも、
その人の生き方や環境のほうが、
ずっと大きな影響を持っている気がする。
健康とは、我慢だけでつくるものではない。
そんなことを考えながら、
静かな夜に水を飲んでいる。
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