もし明日、この世界からタバコが消えたら。
街のコンビニからも、自販機からも、煙は消える。
きっと、肺がんは減るだろう。
受動喫煙の問題も、小さくなるかもしれない。
医療費も、いくらか軽くなるだろう。
それでも――
本当に「みんな健康」になるのだろうか。
健康とは、ただ病気がない状態ではない。
体だけではなく、心も含めたバランスの話だ。
タバコをやめた代わりに、
強いストレスを抱え込む人はいないだろうか。
食べることで埋め合わせをして、
別の生活習慣病が増えることはないだろうか。
もちろん、喫煙のリスクは科学的にも明らかだ。
吸わないほうがいい。
それは間違いない。
でも、問題はいつも単純ではない。
人はなぜタバコを吸うのか。
ただの習慣か。
依存か。
それとも、孤独や緊張をやわらげる「時間」なのか。
健康を語るとき、
私たちは数字を見がちだ。
死亡率、発症率、平均寿命。
けれど、
笑っている時間や、
安心して眠れる夜の数は、
数字になりにくい。
タバコがなくなれば、
確かに体のリスクは減るだろう。
でも、健康な社会をつくるには、
それだけでは足りない気がする。
ストレスを減らす働き方。
孤立しない人間関係。
休むことを許す空気。
そうした土台があってこそ、
「健康」は根を張る。
タバコをなくすことは一つの手段。
でも、目的は「人が健やかに生きられること」のはずだ。
煙の向こう側にあったものは何だったのか。
それを見つめ直さない限り、
別の形の煙が、またどこかで立ちのぼるのかもしれない。
健康とは、禁止だけでは完成しない。
そんなことを、静かな夜に考えている。
0 件のコメント:
コメントを投稿