2026年10月4日日曜日

「今日から運動する」と決めた夜に、そっとスマホを置いた話

 「今日から運動する」

そう決めたのは、夜の十時を少し過ぎたころでした。

お風呂上がりにソファに沈み込んで、なんとなくお腹まわりをつまんでみた、あの瞬間です。つまめるものは、去年よりもしっかりつまめました。

「……よし、明日からじゃなくて、今日からやろう」

人はなぜか、決意だけは立派な時間帯に生まれます。そして私は、決意した直後にスマホを手に取りました。

運動する前に、まず「検索」してしまう

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気づけば、三十分が経っていました。

検索結果を眺めているだけで、なんとなく運動した気分になっていたのです。ランニングシューズのレビューを読み比べ、ヨガマットの色で悩み、おすすめのトレーニングアプリをダウンロードして、まだ一回も開いていません。

これは「準備」という名のごまかしかもしれない、と思いました。

でも、同じような経験がある人は、きっと少なくないはずです。やる気が出た夜に、道具や情報を集めて満足してしまう。いわば「やる気の貯金を、検索で使い果たす」状態です。

画面の中の人は、みんなすごく頑張っている

そのうち、動画サイトのおすすめ欄に、トレーニング動画が並びはじめました。

爽やかな笑顔で「たった5分で!」と言う人。見事に割れた腹筋で「毎日続けるだけです」と言う人。画面の中の人たちは、みんな当たり前のように続けています。

見ているうちに、だんだん気持ちが小さくなっていきました。

「こんなにできる人たちがいるのに、自分は何をしているんだろう」

運動しようと決めたはずなのに、気づけば運動する前から、ちょっと落ち込んでいました。

そっとスマホを置いてみた

ふと、思いました。

今の自分に必要なのは、情報でも、道具でも、理想のフォームでもない。ただ「今日の自分が動く」という、ひとつの行動だけなのでは、と。

それで、スマホをそっと置きました。

ぱたん、と投げ出すのではなく、静かにテーブルの上へ。画面を下にして、そっと。

部屋が急にしんとしました。冷蔵庫の小さな音と、時計の秒針の音だけが聞こえます。

そこで私は立ち上がって、やったことは、これだけです。

  • 両腕を上に伸ばして、ぐーっと背伸びをする
  • 肩を大きく回す
  • その場でゆっくり、スクワットを五回

たった、それだけ。

動画の中の人たちと比べたら、運動と呼べるかも怪しい量でした。それでも、終わったあとに感じたのは、不思議な達成感でした。

「あ、今日から運動、始まったな」

そう思えたのです。

完璧な一日より、小さな一回

あの夜に気づいたことが、いくつかあります。

1. 「やる気」と「準備」は別物
情報を集めている間は、体は一ミリも動いていません。調べることが悪いわけではないけれど、動く前の調べものは、思ったより長引きます。

2. 最初の目標は、小さいほうが続く
「毎日30分走る」は立派ですが、決意した夜の自分には重すぎます。「背伸びを一回」なら、やる前から負けません。

3. 他人の頑張りは、参考にしても、物差しにしない
画面の中の人は、積み重ねた時間が違います。始めたばかりの自分と比べて落ち込むのは、少しもったいないことでした。

それから、どうなったか

正直に言うと、その翌日は、何もしませんでした。

その次の日は、背伸びだけ。
その次の日は、スクワットを十回。
その次の日は、寝坊してお休み。

ぜんぜん、きれいな「継続」ではありません。

でも、ゼロの日があっても、またそっとスマホを置いて立ち上がればいい。そう思えるようになってから、運動は「頑張るもの」ではなく「戻ってこられる場所」になりました。

続けている、というより、何度でも始め直している、というほうが近いかもしれません。

おわりに

もしあなたが今夜、「今日から運動する」と決めたのなら。

まずは、スマホをそっと置いてみてください。
検索はあとで大丈夫です。おすすめのシューズも、明日でいいのです。

背伸びを一回、ゆっくり。
それだけでも、今日のあなたはもう、ちゃんと動いています。

決意した夜の小さな一歩は、思っているよりずっと、あなたの味方です。

なお、持病がある方や、久しぶりに体を動かす方は、無理のない範囲で、必要に応じて医師に相談しながら進めてくださいね。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます

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